とある緩和ケア医の呟き

かけだし緩和ケア医のブログ

緩和ケア医と緩和ケア

「緩和ケア」という領域は国レベルから各医師レベルに至るまで、ほぼ皆が重要と考えている領域である。

しかし、各医師が自分の専門領域を「緩和ケア」としたいかと言うとまた話は別である。

語弊を恐れず言うなれば、

多くの医師が「cure」を目指して医療を行なっているのに対し、緩和ケアは「care」を行うことが役割であることに由来している。

 

Weblio辞書の内容を引用させて頂くが

ejje.weblio.jp

ejje.weblio.jp

 

「care」と「cure」の違いは以上のような意味があって、医師が目指す「治す」と言う行為に対して、「配慮する」と言うのは看護師を含めた医師以外の医療従事者の仕事だと考えているためだ。

これを如実に示していることが、全国で緩和医療学会の認定する緩和ケアの専門医が「200人ちょっと」しか居ないと言う事実である。(2018年4月現在)

専門医制度が始まって期間が短い(2010年から認定制度開始)ことも多少は影響するとは思うが、それにしても年間20人程度しかいないわけなので、いかに少ないかわかると思う。

 

国の方針で緩和ケア領域の充実が図られているのは事実だが、医師側の意識として緩和ケアは「誰か」専門家に任せたいと言う気持ちがあるのは確かである。

 

ただし、緩和ケア領域の充実を図るために「緩和ケアセミナー」受講が半ば義務化している為、全体的には底上げされているのも事実である。

この為、以前とは違って、どこの病院に行っても最低限以上の緩和ケアを受けることができるようになった。

実感としては、ここ10年で医師側の意識は著明に変化していて、自分の専門科でおさまってグチャグチャだった終末期の緩和ケアを、専門家に早期に依頼して介入するようになった。

緩和ケア専門の医師のニーズはかなり高まっていて、がん拠点病院と言われる病院には緩和ケアチームと言う専門チームが置かれるようになっている。

 

今後、益々ニーズが高まっていくことは確かだと思われる。実際ニーズの高まりに伴って、法的にも規制緩和がなされてきている。今は緩和ケアを積極的に志している医師の多くは意識が高く、患者の最善を目指して活動している。しかし、ニーズだけが高まりすぎると質を確保することが難しくなっていくだろう。質が落ちないように監視する制度が必要だと思われる。